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学校における運動器検診について
子育てをされているお父さま・お母さまへ
大切なお子さまに心身ともに健全な成長と発達をしてもらいたいと考えるのは、子を持つ親ならば誰しも同じだと思います。「子どもは親と一緒に育ち、親も子どもと一緒に育つ」と言われます。子どもを持って初めてわかる世界があり、喜びと共に苦労を伴うというのは、子育てに直面しているお父さま・お母さま、またこれまでに子育てを経験された多くの方々が感じていることではないでしょうか?子どもの成長には一定の法則があり、それを知った上で上手に対応する必要があります。
このコラムでは、運動器疾患の診断と治療を扱う日本整形外科学会認定整形外科専門医の立場から、「学校における運動器検診」についてわかりやすく説明したいと思います。なお、「運動器」とは人体の構造の中で、骨・関節、筋肉、靭帯、腱、神経など身体を支えたり、動かしたりする器官の総称を指し示す言葉です。
さて、子どもの体格は年々良くなっているにもかかわらず、運動能力が低下してケガや骨折が増えている傾向にあることが、学校関係者の間で以前より指摘されておりました。こういう状況を放置しておけないとして日本医師会と日本学校保健会が文部科学省に何らかの対応を行うように要望を重ねて行い、平成17年(2005年)より「学校における運動器検診体制の整備・充実モデル事業」が10の府県において開始されました。その結果、運動をしない子に体の固い『運動器機能不全』と言われるグループがあり、体をうまくコントロールできずにケガをすることが多く、また運動過多のグループではさまざまな運動器の障害が発生する『オーバーユース症候群』に陥っている例があることが明らかになりました。それを受けて平成26年(2014年)学校保健安全法施行規則の一部改正が行われて、平成28年(2016年)4月から小学校・中学校・高等学校・高等専門学校の全学年において、年に1回行われている学校における健康診断に「運動器検診」の項目が組み込まれて調査されるようになりました。具体的には各学校にて作成した「運動器検診保健調査票」(資料参照)を子供たちが持ち帰って来て、保護者がこれに記入して学校に提出、それを養護教諭が回収します。また学校での普段の生活やクラブ活動を通じて関係者が気づいた点も加味して、養護教諭がまとめた資料を健康診断の際に学校医に伝え、各児童生徒につき運動器検診が行われます。その結果を養護教諭は保護者に伝えますが、異常が指摘された場合には日本整形外科学会認定整形外科専門医の受診を勧めることになっています。
運動器検診でのチェックポイントは
①背骨の曲がり具合はどうか
②腰の動きと痛みがあるか
③片脚立ちが5秒以上できるか
④かかとを床に着けたまましゃがみ込みができるか
⑤肘の動きと痛みがあるか
⑥バンザイして両腕が耳に付くか
の6つの項目について行われます。
子どもの体は大人のミニチュアではなく、成長期の子どもの体には大人と大きく違ういくつかの特性があります。
2.関節周囲の構造もやわらかく、大きく曲がる
3.骨が長く大きくなり、身長が伸びて体が大きくなる
4.身長の伸びの旺盛な時には筋肉・腱がつっぱる
5.骨の端に骨端線という成長軟骨が存在する
この問題に対しては、子どもの運動器の成長と変化を確認しつつ、タイミングを見計らって上手に対応できないと、好ましくない後遺症をも残しうる危険性をはらんでいるため早期発見と症状に合った対応がとても大切で、毎年の学校の健康診断で「運動器検診」を受けられるということは、子どもの成長を見守る側からはとてもありがたいシステムだと思っています。 最後になりますが、成長期における運動器の健全な発育が、
⓶.心肺機能の向上につながり
⓷.脳や心の発達や知力の獲得につながり
⓸.成人の肥満やメタボの予防につながり
⓹.ひいては健康寿命の延伸にも寄与する
と考えています。
そのため、成長期の子どもの診察に当たっては特に気を引き締めて慎重に診ております。